「自社の強み」「セグメンテーション」「4P」。マーケティングの基礎用語は、一度は聞いたり学んだけれど、それらの概念と実践がいまいち結びつかない。そんな人に超おすすめなのが今回ご紹介するマンガ。スモールビジネスを営むすべての人におすすめの一冊です。本の中に登場するつぶれかけのイタリア料理店を自分のビジネスに置き換えて読み進めていくことで、マーケティングの基礎を学ぶだけでなく、自分のビジネスの価値、強み、ターゲット、今後の課題などが明確になっていく、まさにセルフ・コンサルティングの手引書といった一冊です。マンガなのに、たくさんの学びがあります。ここでは、印象に残った2つのシーンを例に、この本のすばらしさを紹介し、最後に個人的に勉強になったポイントをメモ書きしました。
市場動向うんぬんより「肌感覚」を大切に
ストーリーは、主人公「うれたま」ちゃんが、つぶれかけのイタリア料理店を再生する改善企画書を作ることろから始まります。人口構成や市場動向を分析する彼女に、いとこでありマーケティングのプロの勝さんが尋ねます。
勝さん:「今晩(一緒に食事をしている)このレストランを選んだ理由は?」
うれたまちゃん:「話ができる静かなお店を選びました」
勝さん:「どうやって情報収集したの?」
うれたまちゃん:「友達に聞きました。それから、ネットで候補を絞って、駅から近くて雰囲気のよいところを…」
ここで勝さんが言います。
「そうやってお店を選ぶよね。で、今の決め方に「『人口構成』とか『市場動向』とか出てきた?出てきてないよね。マーケティングではこういう『肌感覚』が大事なんだ。マーケティングはどこかの会議室で起きてるんじゃない、身の回りで起きているんだ」
踊る大捜査線の決め台詞が出てきたこのあたりで、もうすっかりこの本の虜になってしまった私。というのも、かつて私も、この主人公と同じように、市場動向や人口構成を分析しながら、「それでいったい何をどうすればよいのか、マーケティングとは何なのか」が分からなくなった経験があったのです。
ありきたりだけれど、お客様の視点を持つこと、それがマーケティングの第一歩。
マンガ 新人OL、つぶれかけの会社をまかされる (主人公うれたまちゃんが可愛くて、読むこと自体がすでに楽しい!)
価値・ベネフィットは、お客様の使い方から学ぶ
続いて、マーケティングの基礎概念の一つである「価値・ベネフィット」とその見つけ方を学びます。
つぶれかけのイタリア料理店の価値を尋ねられた主人公うれたまちゃんは、「イタリア料理店が提供している価値は『おいしい料理』」と答えますが、マーケティングプロの勝さんは、より一歩踏むようアドバイスします。料理「だけ」でなく、料理を含めた何らかの価値・嬉しさを探す必要があるのです。
美味しいイタリア料理なら他にもある。数あるレストランの中から、このお店を選ぶ理由は何なのか?その答えこそが、自社の「価値・ベネフィット」である、そしてそれは「お客様の使い方」を観察することで見つけられる、と説きます。
うれたまちゃんは、お客様を観察し、アンケートを実施してその答えを見つけます。
私は旅行会社を経営していますが、「お客様に提供している価値=旅行」だけでは掘り下げが不十分ということです。他社ではなく弊社を選んでいただく理由は何か?お客様はどのように弊社を利用してくれているのか?弊社に期待していることは何か?を一歩踏み込んで考えることで、私のビジネスの価値・ベネフィットを見つけることができるのだと理解できました。
主人公と一緒に、自分のビジネスの価値・強み・ターゲット・戦略がわかる
こんな風に、主人公の前に次々と提示される課題を、自分のビジネスと照らし合わせながら一緒に考えていくことで、マーケティングの基礎を学ぶだけでなく、自社の価値・強み・ターゲット・戦略などを整理していくことができます。
まさに、セルフ・コンサルティングの手引書ような一冊だと思いました。
正直ちょっとした暇つぶしにと思ってKindle版で購入したのですが、読み終えた今、学ぶことが多くて何度も読み返しています。単行本でも良かったかな?と思うくらいの一冊です。
ちなみに、もともとは『ドリルを売るには穴を売れ』という原作が「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」という別題で小説化し、日本で一番読まれたマーケティング小説となったことで、2017年にマンガ化したのだそう。4年も前の出版でしたが、古さをまったく感じさせない本でした。
原作にも興味がわいたので、読んだらまたここでご紹介したいと思います(Kindle版が無いので海外取寄せかぁ…)。
備忘録:特に印象に残ったポイント
最後に私の備忘録として、個人的にとても印象に残ったポイントを書き残しておきます。
- マーケティングは常に身の回りで起きている。「肌感覚」を大切に
- 「価値=嬉しさ=ベネフィット」は、お客様の使い方に現れる
- ベネフィットを求めている人が、すなわちターゲットである
- セグメンテーションは、性別・年代だけなく「使い方(価値)」でも分類
- より高い「価値」を提供するとターゲットに選ばれる→「強み」の発見
- 差別化の軸は、「商品軸」「密着軸」「手軽軸」のいずれか
- 差別化の軸は、商品づくり・販促・接客などにおいて一貫性を持たせる
- 以上の概念を現実に落とし込むの際に「4P」を使う
- お客様に「こういう風に嬉しくなってほしい」という想いを核にする
いかがでしたか?マーケティングの基礎を学びたい人、基礎をおさらいしたい人、スモールビジネスのブランディングで迷っている人、のお役にたてたら嬉しいです。一緒にがんばりましょう~。ではでは~!
新人OL、つぶれかけの会社をまかされる 新書 (←こちらは小説版)
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一年の大半を外国人のお客様と旅をして過ごしています。旅先で感じたことなどを時々アップしています。シドニー在住。
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